早寝記録

福井と眼鏡

 コンタクトレンズがカピカピする。
 眼精疲労はバカにできないものだった。面倒くさがりの俺は電気をつけたり消したりも面倒だと思うことが多く、結構暗闇の中少しの灯で勉強することが多かった。その結果視力に問題が生じ眼鏡となったわけだが、眼鏡をかけて学校に行ったことはあまりなかった。
 元会長にあまりおすすめしないと言われたからだ。なんでも、今時のおしゃれな眼鏡じゃないから。瓶底でもなければ昭和! という感じのものでもない。ましてや明治でも江戸でもないと思うのだが、俺の眼鏡はおしゃれではないらしい。ただの銀の細いフレームのものだが、自分では今時のおしゃれなものよりも自然で良いと思う。それに、何より時代に左右されないというのが一番の強みだ。視力が変わらないかぎりかけ続けられるのは最高だと思う。
 コンタクトレンズがカピカピするというのは字面以上の大きな問題だった。意識して涙を出そうとするあまり時間をロスするし、集中力もなくなってしまう。
 だから俺はおしゃれなものでなくても眼鏡をかけることにした。
 昨日は夜遅くまでパソコンと向き合っており、寝たのは明け方。能登には北上が復活するまでは抱き枕になれない旨伝えているから、早寝の能登に気を遣うことなく夜遅くまで……朝まで仕事ができるのだ。途中からは、寝ることが面倒くさくなったから限界までキーボードを打っていた。面倒くさがりが初めて良い方向に作用してくれたおかげで昨日終わらせる分は全て完了することができた。
 明日できることは今日やらない。
 これを座右の銘として今まで生きてきたが、昨日の俺は、今日できることは今日やる!という前向きで真面目な人間みたいな行動をとってしまったのだ。
 もしかしたらこれを機に面倒くさがりが治るかもしれないなんて淡い期待も……ないけれど、こう思わなければやっていけない。
 北上は寝込んでいるのか音沙汰無しだし、ユートピア三人組は仲良く治療中……。一日一日やるべきことが降りかかってくるが、昨日はほとんど徹夜でできたけど、こんな方法は何日ももちやしない。今でさえ頭が重くて仕方ない。
 とりあえず授業はサボって生徒会室にいるが、全くやる気が起きないというのが現状。
 せめて天気が良ければと願うが今日は朝から雨が降っている。俺が窓に目をやった瞬間空間を一閃の稲妻が切り裂いた。その筋は青く発光しており格好いい。
 生徒会長の、座り心地の良い椅子の背もたれに身を任せ、昨日の会議の記録を眺める。それぞれの委員会が主張ばかりしている印象を受けた。それを無下にしたら多分バッシングされるし、でも全て受け入れるわけにもいかない。今まで知らなかったが、俺達が動かせるお金というものがあり、それ以内ならば何をしても良いが、それを超えてしまうと体育祭があろうと文化祭があろうと学校から俺達にお金は一切出ない。
 そういえば、生徒会発足時みんなで各月毎の予算を決めた気がする……。
 思い出し、あまり触っていないため片付いている机の引き出しを探る。
「あった……」
 数回しか開いていないファイルを見つけた。その中に探しているものがあった。
「今月使える金額は……」
 指で文字をなぞりながら計算していく。
 片手でパソコンを操作し、今月すでに使ってしまった金額も調べる。
「……ふうん」
 ぽん、とファイルを机の上に置く。状況は把握できたが、興味が持てずやる気もでない。興味とやる気がなくてもやらねばならないことであればやらなければいけないのだが、そこですぐに実行できる人物がいれば、そうでない人物もいる。俺はもちろん「そうでない」方。
 テスト勉強も、物理的に時間が足りなくなるであろうぎりぎりを見極めいやいや勉強をはじめるくらいだ。自分に嫌気が差すが、でもこれが俺。変わりたいと思う時もあるが、変にやる気満々になってじたばたして生きていくよりも、泳げないで水の流れがなくなったら死んでしまうクラゲのような人生の方が俺は好きだ。
 あまり悩みたくない。考えたくない。平坦でつまらない人生の中に、たまに、本当にたまにで良いから嬉しいことがあれば、俺は幸せだと思う。
 頑張った先にある大きな喜びも幸福もいらない。
「めんどくせぇー」
 机に突っ伏す。今はお昼くらい? しばらく時計を見ていないからわからないけれど、まあそんな感じだろう。トイレに少し行きたい感じがするから、ここで居眠りしてしまってもそんなに長時間は眠れない。
 面倒くさかった。疲れていた。俺は特別葛藤することなく、睡魔に身を委ねた。