早寝記録

穴につっこもうかしら

 常識なんてどこにもなかった。なんか食ってから始まんじゃないのとか、少し話し合ってから始まるんじゃねえのとか色々考えたが、染井は俺の部屋に入った瞬間学ランを脱ぎ捨てた。でも、まだそうと決まったわけではない。学ランは脱いだがまだワイシャツまで行ってない。と思いきや染井はプチプチとワイシャツのボタンを外し始めた。
「染井ストップ!」
「なんだよ」
 染井の頭から部屋の温度で溶けた雪が水となり床を濡らす。俺だってそうだ。頭から制服まで水浸し。
「まずは風呂入ろう。濡れてさ、寒いじゃん。こ、このまましたら風邪引くって」
「一緒に?」
「え?」
「松見やっぱお前ものりのりなのか。俺、まさか風呂に誘われるなんて思ってなかったよ」
 勘違いをした染井が笑う。すごくいい笑顔だ。その間にも彼の手は止まらずワイシャツの隙間から筋肉質な胸が覗く。
「つーか風呂わいてんの?」
「いや、洗ってはいるけど……」
「ま、溜めながらでいっか」
 染井は部屋に入った所で突っ立っている俺のところまで来ると、さも当然というように手を取って風呂場に進んでいく。手を取られた俺はあっけに取られながらも転ばないように足を動かす。
 なんか違う。俺の意図した方向にこいつ考えてくれない。もしかしたらわかっているのにわざと空気を読んでいないふりをしているのかもしれないと思い至ったが、おそらくおれのこの考えはあたっているのでこれ以上考えることを止めた。
「なあ、明日何曜だっけ?」
 狭い脱衣場にふたり収まり制服を脱いでいると唐突に染井が質問してきた。
「……木曜だけど」
「じゃあ2日くらい休んでも平気だな」
「あのさあ……」
 染井はなんのためらいもなく下着を脱ぎ彼の分身を晒す。
「なんだよ」
「……なんで休むことになってんの」
 俺はまるで恥ずかしがり屋の処女みたいに脱いだ衣類で前を隠した。でもやってみて思ったがこっちのほうが堂々としているよりも恥ずかしい。恥じらいは恥じらいのもと。16年生きてみて初めて知った。
「あれ? お前そんなに真面目だっけ。サボったりしねえの?」
「真面目とか不真面目とかじゃなくて、明日行けねえほど、なんつーか、俺明日どうなってんの」
「大変なことになってるだろ。きっと。あ、でも安心しろよ。俺もケツがどうなんのかしらねえからちゃんとウエッティとかと一緒に傷薬も買ってきた」
「……今更やめようとかはねえけど、ほんと、まじで、染井が生きてきた中でこれ以上ないくらい優しくしろよ」
「わかってるって」
 染井が爽やかに笑いバスルームへと入る。そして我が物顔で湯船にお湯をためだした。やっぱローズの香りだろなどとのたまいながら俺が姉からもらったバラ型の固形入浴剤を投入している。お湯が貯まる頃に溶け、バラの花弁が浴槽に浮かぶという今は使いたくないシロモノだ。
「あ。そうだ。松見、体洗ってろ。俺忘れ物」
「忘れ物?」
「ああ」
 染井につづいてバスルームに入った俺を避け、染井が出て行く。良い予感はしないが染井を止められる気はもっとしない。
 俺は諦めて染井の言うとおり体を洗うことにした。

 今までにないくらいケツを念入りに洗った。大事にしすぎて魂が宿るんじゃないかくらい大切に念入りに洗った。心の中だがこの後のことを思いエールを送った。尻よ頑張れと祈った。
 祈りが泡と一緒に排水口へと消えた頃染井が戻ってきた。俺は彼の手の中にあるものを見て愕然とする。
「なんで。なんでお前それ持ってんの。何。なんなのまさかここでやるとか言わんよね。まじで俺嫌なんだけど。乙女なこと言ってみると初めてはベッドが良いです」
「慣らすだけだよ。なんかあったかいほうが広がりやすい気しねえ?」
「ちょっとわかるこの感じが憎い!」
「それにリビングは暖かいけどさ、寝室寒いじゃん」
「出たらドア開けてあったかくするから大丈夫だってば」
「あ。体洗ったんだ」
「う、うん」
「じゃあちょうど良いな。松見、バスタブのヘリに手を付いてこっちに尻向けろ」
「……いやだ」
「なんでだよ。この体勢が一番いいだろ」
「で、でもなんかやだ!」
「いいからいいから」
 染井は俺の洗いたてのなめらかであろう背中を押してバスタブの側面にぐいぐいと押し付ける。まだ浴槽は3分の1程度しかお湯が溜まっていないがほんのりとバラの香りがした。
「は、恥ずかしすぎるっつーの! ていうか良いよ俺自分で、ケ、ケツ慣らすから!」
「バラの匂いして来たなあ」
「染井、聞けよ」
「なんで? ていうかさー。松見恥ずかしがってばっかいるけど、そろそろ往生際が悪いんじゃねえの」
「うっ」
「なにも俺わくわくセット使おうとか言ってるわけじゃねえのにさ、ただケツに突っ込みやすくするためにそこに手付けつってんだよ」
「……わ、わかったよ」
 往生際が悪い、が致命傷だった。きっと染井は潔いやつが好きだ。俺は染井に好かれたいあまり潔いやつを演じる。もう遅いとは思うけど。
 ほとほと自分の乙女思考に嫌気が差した。潔いやつを染井は好きだろうが自分を偽る奴は大嫌いだろう。俺の本性は俺も知らないけれど、きっと女々しくて乙女思考だ。絶対そう。人間恋すれば変わるというけれど、恋をしたら本性がでるだけではないだろうか。女が友達放っぽいて男ばかりに行くようになるのも、男が束縛するのもそいつが変わるのではなくそれが元からあるものなのだ、きっと。
 余裕がなくなれば、または余裕が有り余ればそいつの本質がわかる。
「途中で冷静になるなよ」
 言って、俺はバスタブのへりに両手を付き四つん這いになった。バラが香る。
「冷静? 俺、冷静だよ多分」
「途中でこいつすげー恥ずかしい格好してんなとか思われて笑われたら俺立ち直れない」
「大丈夫、今でもすげー格好って思ってるよ」
「……」
 へりにでこをつける。じめっとしている。染井は俺を虐めるのが好きなのだろう。

 つうと何かが背中を伝った。
「嘘だって。割と興奮するね。俺、セックスはオナニーの延長って考えだけど、これはなんか違う感じがする」
「どう違うの?」
 少しどきどきした。今までもこれから行われるであろう友達以上のことにどきどきしっぱなしだったが、今のどきどきはそれまでのものとは違った。
「どう違うんだろうな」
 背中を伝った何かが、尻の割れ目に到達する。染井がさっき持ってきたローションだろう。しかも、業務用の。
「入れてみる。入れる時ってさあ、力抜けばいいのかね」
「この体勢で力抜くの無理」
「じゃあこのぬるぬるに頼るか」
「わっ」
 尻に圧迫感。
 染井は指にローションを絡ませて、上下左右に小刻みに震わせながら侵入してきた。俺からは彼が見えないが、目が顔の前に付いていて心底良かったと安心する。もしも目が後頭部に付いていたら俺は染井にいじられているケツを見なければいけなかったから。
「なあ、痛い?」
「まだ痛くない」
「あ、そ」
 でも好奇心とは時に羞恥心すら殺すもので、俺は一体自分の後ろがどうなっているのか気になってしまったのだ。
 おそるおそる体をねじり振り向くと、床に膝を付いた染井が真剣に俺の尻に指を入れていた。っていうか――
「結構入ってる……!」
 第一関節は突破している!
「ああ。だから痛くねえの? って聞いたんだけど、平気そうだな」
「それもいやだ!」
「なんでだよ」
 圧迫感はある。違和感に抜いてほしいと思う。尻に何かが入っているという感覚はしており、それを締め付けているとも感じている。だが、違和感は違和感で痛くはない。
「痛くあって欲しかった! 尻は出すものなのに俺の尻は抵抗もせず受け入れてるんだよ。そんなの嫌じゃん? 反抗して欲しい。反抗的に生きて欲しい!」
「意味わかんねえよ」
 染井が笑い、ローションを更に垂らす。尻だけでなく大腿を伝い床に垂れる。
 染井は出口(入り口?)に近い所でゆっくりと抜き差しを始めた。少し入れては出してを繰り返す。くにくにされながら、ああ、広げられているんだなと思った。
「松見、お湯止めて」
「へ……」
 バスタブのへりにしがみつきながら尻への刺激に耐えている俺に染井が命令する。
「溜まってきた。二人で入るんだからもう良いよ、もったいない」
「あ、ああ、うん……」
 手を伸ばしお湯を止める。3分の2ほどまで溜まった水の表面にはバラが浮いていた。なんだかひどく嫌な気分だ。ロマンチックすぎる。どうせならバラじゃなくてゆずとか浮かべたかった。それよりも草津の湯とか、そういう年寄り臭い入浴剤の方が今の俺の精神状態には良い。
「ちょっと奥まで入れてみるから、痛かったら言えよ」
「うん」
 染井が断り、更にローションを足す。ここが風呂場で良かった。ベッドとかだったら、もうぐっしょぐしょだろう。
 染井はゆっくりと指を進めてきた。いつも思い切りがいいやつだが今日は慎重だ。それがありがたくもあり、優しくされているということがやはり恥ずかしくもある。
「痛い?」
「残念ながら……」
「痛えの? 我慢できる?」
「痛くない……」
「ああ、そう。良かったじゃねえか」
 尻の感覚を信じるならば、おそらく染井の指はもう第二関節くらいまで入っている。今度は後ろを振り向く勇気がない。本当に違和感だけで痛くはないから。
 さっき染井にちゅーしたいと言ってしてもらった時、才能あるんじゃねえかと失礼なことを言われたと思ったが、どうやら本当に才能があったようだ。
「松見」
「……何?」
「前立腺っての俺探すから、当たったら教えろよ」
「聞いたことあるけど、どうなんだっけ」
「さあな。さっきローション取りに言った時流し読みしてきただけだから。当たったらわかるだろ」
「……」
 染井が俺の尻の中で指の角度を変え出した。みしっという音が聞こえた気がしたが気のせいだ。それと一緒に少し痛みも感じ安心する。
「染井! ちょっと痛い!」
「なんでお前は嬉しそうなんだよ」
「あ! 痛い! ピリッ? なんか痛え! 良かった!」
「良かったな。……アホだなお前」
 失礼なことを言われた気がしたが、それどころではなかった。染井が押し当てた場所が、なんだか他とは違う感じがしたから。
「あ。なんか触った」
 ぐ、ぐと指の腹で押され、おかしな感覚が沸く。快感とは違うがなんとなく違和感がある。俺の俺に直結していそうな、そんな雰囲気。
「……暑くなってきたな」
 染井が呟いた。実際俺は汗だくだ。すぐ目の前には湯気立つバラの香りの浴槽があるのだ。いくら換気されていると言っても戸を閉めきった浴室内はそれだけで暑く、やりながら気がついたら倒れていた事態も十分ありそうだ。
「俺、体洗う」
 染井が唐突に指を引き抜く。
「え」
 そして代わりに何かを押し込んだ。
「う、うわっ」
 染井はそれを中まで強引に進めると、さっき探り当てた前立腺かもしれない所に押し当てる。やはり変な感じがするが、それよりも何を押し込まれているのか気になり身をよじって後ろを向く。尻から何か出ている。紐のような何か。そして見間違いでなければ染井の手に小さなリモコンらしきものがある。
「……染井」
「これも買ったんだよね。おっさんが安くしてくれたから。ワンコインだった」
「その情報いらなかった! あっ」
 染井がスイッチを入れると、俺の尻の中でそれは小刻みな振動をし始めた。
「あ、なんか、それ止めろよ! 染井これやだって!」
 おそらく一般的にバイブと呼ばれるものだ。俺は使ったことないけど、っていうか。
「俺の処女がバイブに……!」
「さっき指入れたよ」
「じゃあ俺の処女は座薬に捧げてるよ! 違うよ、なんか、あっ!」
「お。なになに?」
「へっ、変!」
「気持ちよくなってきた?」
「そうじゃねえ!」
 手もどこも拘束されていないんだから自分でも引き抜けることに俺は全く気付いていなかった。ただ前立腺(決定)を震わせるそれにより俺の俺が何か、気持ちよさ的な何かの気配を察知してしまった。
「あ、ああ……」
 情けない声を出しながら女のように内股になりその場に崩れ落ちる。バスタブのへりだけが俺の味方だ。崩れ落ちた拍子に床に尻がつくと今度はピンポイントでバイブがあそこに当たる。少しの間快感だかなんだかわからない感覚に身悶える。
「そ、染井……」
 助けて欲しくて染井を振り返れば、奴は鼻歌交じりで頭を洗っていた。え? こいつ、本気で洗ってる。なんかトリートメントとか手に出してる。え? 体だけ洗うんじゃねえの? 俺、放置?
「あ。松見、お前いっつもいい匂いしてると思ってたけど、これの匂いだったんだな。香水つけてるチャラいやつだと思ってたのに」
「……う、うん」
 ヴー、ヴーと、バイブが尻の中で低く唸る。何この状況。ギャグ? 俺、こんな時どんな顔すればいいかわからないの。笑えば良いと思う? 余計カオスだよ。
 こんなばかみたいな事態に見舞われている間にも俺のケツ開発はどんどんと進んでいるようで段々と違和感が気持ちよさに押されてきた。気を抜くと息が抜け、文章に表すと語尾にはハートのマークが付いてしまう。
 染井の髪の毛はもはやつるつるとしている。トリートメントが染み込んだのだ。彼はしっかりとトリートメントを流した後、髪の毛をグチャグチャにかき混ぜて犬のように頭を振った。なんか、格好良い。
「お。松見、少し見ない間にお前いい顔になったな」
「……いっいみわかんねぇっ」
「メスって感じ」
「ひどい」
 すぐ体を洗えばいいのに染井はまた浴室を出た。この時になって初めて俺は自分が全く拘束されていないことに気づき、腰を浮かせて後ろに手を遣った。バイブを抜こう。尻から出ている紐を掴むと中のバイブの角度が変わってしまい声が出る。心なしかケツの入り口がひくついているようだった。なんだこれ。恥ずかしい以前に客観的に自分を見るとインラン以外の何者でもない。
 四つん這いになり腰を浮かせ、バイブの紐を掴みおそらく恍惚の表情をしている。死にたい。
 すぐに抜いてしまえばよかったのに俺は少し逡巡してしまった。鋼鉄のケツを持っているのに、抜く時痛いかな? などとビビってしまったのだ。そのうちにありえない物を持った染井が帰ってきてしまった。
 俺は染井の手にしたものを見て再び固まった。
「何……それ……」
「つーかお前カンノー的な格好してるな」
 染井の手には小さなちんこが握られていた。

 彼のものを握っているのではない。大人のおもちゃ屋に売っている、ちんこを模したアレが握られているのだ。
「おっさん太っ腹でさあ、これプレゼントしてくれたんだよ。突っ込んでみようぜ」
「嫌だよ!」
「なんで? 慣らした方があとあと楽だよ」
「なんでお前はすぐ道具に頼ろうとするんだよ! あっ、あのおっさんはドラ○もんじゃねえしっ、んっ、お前はの○たじゃねえだろ!」
「気持ちよさそうだな、松見」
「いっ今これ俺取るから! そうしたらもう俺自分で慣らす!」
 俺は宣言し勢い良く尻からバイブを引き抜いた。
「ううぅ……」
 引き抜く寸前、一瞬だけすごい快感が駆け抜け、泣きそうになった。俺の体はどうなってるんだ。本当に初めて? 俺のケツはケツじゃなくて本当は女の……いや、んなはずねえ。俺のケツはケツだ。尻。ヒップアンドアナル。
 外に出たバイブはまるでねこじゃらしのようにくねっている。卑猥なくねりに今後俺はねこじゃらしを健全な目で見られないだろう。そっとスイッチをオフにする。
「お前、痛いのが好きなのか?」
 染井が俺の前に膝をつく。ちんこが目に入った。
「違うよ。どうしてそうなるんだよ。処女の気持ち考えろよ。処女なのにちんこ型の玩具突っ込むとか、俺がお前の彼女だったらさめざめと泣いてる」
「今もじゃねえか」
「泣いてねえよ」
 言って、業務用ローションに手を伸ばす。バスタブの側面に背中を預け、ローションを尻の穴に塗りたくる。
「に、2、3本入ったらお前もう突っ込め。なんか、俺冷めてきた」
 中指を入れてみる。俺の中は温かく、すんなりと指を飲み込んでしまう。今のところ一番気持ちいいのは入口付近。尻穴を出口と呼ぶのはもう止めた。俺の尻は出入口だ。一方通行じゃない。
「松見、悪かったよ」
「あ、謝ってくれなくてもいい」
「怒んなよ」
 指を2本に増やす。多少圧迫感は増したが平気だ。もしかしたら俺が今感じているのは痛みなのかもしれないが、我慢できるし、苦手なものでもない。
「松見」
「さわんなっ」
 染井が尻に突っ込んでいる方の俺の手に手を重ねてくる。
「俺も入れる」
 そうして何を思ったか満員状態の俺の尻に自分の指を突っ込んできた。
「そっ染井! それはっ、いっ」
「痛い?」
「んんっ」
 きつい! 怒っていたのに、それすら頭から吹っ飛んだ。気づけば俺の尻からすべての指が抜かれている。
「……柔らかくなったな」
「……染井」
「悪かったよ。処女の立場に俺、立ててなかった」
 その言い方は、それはそれでちょっと嫌な感じ。しかししんみりと言う染井に文句を付けることはできなかった。思考が変わっているのだ。染井は染井の世界を持っていて、俺はその住人になりたいと思っている。染井なりにさっきの俺の言葉を考えてくれたのだろう。今となってはなんであんなことを言ったのかわからないが。処女とか言うんじゃなかった恥ずかしい。
「……松見」
「何」
「俺、普通にお前とヤリてえって思ってるよ」
「何!?」
 染井は真面目な顔でそう言うと、開いている俺の足の間に身を収め顔を寄せてきた。
「ちょっと、染井! んっ!?」
 口で口を塞がれる。
「あ……」
 息を吸うために口を開くとそこからさっきよりも熱い舌が滑りこんできて、なんだかわからないがそれに俺のも絡ませる。なんとなく、またキスをされるとは思っておらず、嬉しいんだか驚きだか複雑な感情が胸に生じた。
 浴室内ではぴちゃぴちゃと水音がしている。天井の水滴が落ちる音、俺達によるいかがわしい音。
 染井のキスはエロく、俺の萎え気味だった俺はいつのまにか元気になっている。腕だって知らないうちに染井の首を抱くようにして伸ばしていて、まるで本物の女になった気がした。いくら突っ込まれる側でもあまりにも女々しい体勢に思えたのだ。しかしそれは俺にとって嫌なことではなかった。
(染井の女になりたいのか? 俺は)
 ふと、染井が顔を離した。間近で見るへらへらしていない染井はこの瞬間だけは世界一格好良かった。
「松見、入れる」
「は? あ……」
 理解する前に尻にさっきとは比べ物にならないほどの圧迫感を覚え目を瞠る。
「さすがに痛いと思うけど、お前、俺のために我慢できるか?」
「あ、あ、染井っ」
 染井は少し腰を進めると引き抜いて、俺をタイルの上に寝かせた。そこは硬くて濡れていた。
「な、んでいきなりっ」
「後悔したんだよ」
「こ、後悔? お前が? 知ってたのかよ、寧ろその言葉……」
「知ってるって。なんかさ、遊びの延長みたいな感じでやったけどさ、雰囲気作ってやった方がお互い良いなって思ったんだよ」
「は? 雰囲気? なんで急にそう思ったんだよ。キモい。染井が後悔とか、天変地異が確実に起こる」
「天変地異? 見てみてえな。空に山が生えたら、壮観だろうな」
「なんかそれ、ちがっ」
 染井の染井が尻に入ってくる。少し挿れては抜いてを繰り返し、確実に深くなって行く。目を開けたら頬を赤くして水を滴らせた染井がいたから、俺は目を開けることができなくなった。男くさい染井を俺は格好良いと思ってしまうから、恥ずかしくて見られないのだ。
 こんなんじゃ惚れてないなんて嘘はもう吐けない。自分の心にさえ無理だ。
 時間を掛けて染井は俺の中に収まった。
 気持ちいいとか気持よくないとか、そんなのはどうでも良かった。俺はこの時一切快感なんて追いかけていなかった。
 染井の形を体が覚えた。それだけで幸せだったのだ。