叱咤
列車を降り、小さな駅に立つ。
駅から出るところで、駅員に稲穂町のバス停を尋ねた。一本道をひたすら進め、というのが答えだった。
駅員にどもらずに質問できたことに安堵したが、歩き続けてわずか数分で体中に鈍い痛みが走る。病院でも列車に乗ってからも緊張していたから痛みを忘れていたのだろう。
駅員に教えてもらった道は本当に一本道だった。周りは田園。遠く前方には俺の前に立ちはだかるような山々が望んでおり、果ては見えない。空は高く、雲は薄い。よく晴れたいい天気だ。ふいに上空を名前を知らない美しい鳥が過った。
20分歩き続けてようやく一本道の終わりが見えた。正面は山道の入り口で、左右には道路が伸びているようだ。昔懐かしい平屋の家もぽつらぽつらと見えている。
さらに歩き続けると、バス停がぽつねんと立っているのがわかった。自然と進む足が早くなる。でも、同時に不安も芽生えた。あのバスに乗れば、恭弥君の通う学校へと行けるはずだ。稲穂町から行ける全寮制の学校を俺は知っている。というか、学校はそこ1校だけだから間違えようがない。
勢いでここまでやって来たは良いが、俺は恭弥君に会ってどうするつもりだろう。いきなり謝ったって自己満足に他ならない。
もし、迷惑だと言われたら……?
(馬鹿か)
俺は、また自分のことしか考えていない。恭弥君がどんな人だったか、どうして考えないんだ。
恭弥君は話を聞いてくれる。俺のことを怒ってたって、話だけはちゃんと聞いてくれる。
怒っているかもしれない。俺は恭弥君の気持ちを考えていなかったのだから。
よし。
また顔を上げて歩みを再開する。バス停まではもう少しだ。